病気や怪我などで障害のある方は、障害年金の制度を使うことで国からお金が給付されます。障害年金の受給は国民の権利ですから、後ろめたさや恥ずかしさを感じる必要は一切ありません。
障害を持っている方でも健常者と同じでお金は絶対に必要ですし、急な出費や交遊費、治療費などでお金に困ることもあるはずです。障害年金は働きながらでも受給可能ですので、忘れずにきちんと申請しておくことが大切です。
この記事では、障害者が国からもらえるお金である「障害年金」の概要や障害等級、申請条件、受給までの流れなどについて分かりやすく丁寧に解説していきます。
障害年金とは病気や障害を抱えている方がもらえるお金
障害年金とは病気や障害を抱えている方が国からもらえるお金のことで、法律に基づいた所定の障害を持つすべての方のために存在する公的年金です。
障害年金は働きながらの受給も可能で、条件によっては所得制限もなく満額支給してもらえる可能性もあります。
日本ではこのような社会保障が充実していますが、実際のところ何かしらの障害があっても申請せずにいる方や家族が多いのも事実です。
これらは全ての国民にもらえる権利のある社会保障なので、万が一の時には忘れずに市町村役場で申請しましょう。また、今は健常者でも、いつどんなタイミングで障害を持ってしまうのかは誰にもわかりません。
その時になって慌てないためにも事前に基本的な知識をきちんと頭に入れておくことが非常に大切です。場合によっては、もらえるものももらえなくなることがありますので、最低限の知識を把握しておきましょう。
ここでは、そんな病気や障害を抱えている方がもらえる障害年金の条件や決まりごとなどについて詳しく解説していきますので、障害年金の申請を検討している方の参考になれば幸いです。
障害年金は働きながら受給可能!20歳を超えて患ったのであれば所得制限なし
障害年金を受給しつつ働くことも可能で、もし20歳以上になって病気や怪我などで障害年金の受給対象者となった場合には所得制限もありません。
つまり、仕事や投資などでどれだけ稼いでも所得制限に引っかかることがないため、患った前の仕事をしつつ、障害年金を受け取ることができます。
これは患ったタイミングではなく、初診日の年齢です。初診日に20歳未満だった場合には、所得制限の対象となるのでご注意ください。
当然のことですが、障害年金の受給に雇用形態は関係なく、正社員や契約社員、アルバイト、自営業など、どんな働き方でも所得制限はありませんのでご安心ください。
ただし、所得に対する税金は納めなければいけません。正社員であれば会社の方で処理してくれますが、自営業や副業などで稼ぎがあった場合には、毎年必ず確定申告を行い、所得に応じた納税を行いましょう。
また、障害があるからといって納税の義務が免除されるわけではありません。場合によってはもらえるはずの年金が減額されたり、税務署からの調査が入る可能性も十分に考えられますのでご注意ください。
どうしても納税ができない場合には、一度税務署に理由を説明してみてください。正直に相談をすることで納税期限の延長や分納も可能ですし、年金の受給額に悪影響を与えることもなくなります。
20歳前に障害認定を受けた単身世帯の場合は年収約360万円以下であれば満額支給
注意したいのは、20歳になる前に患った場合で、前年の所得額によって支給内容と支給額が大きく異なります。20歳前に障害認定を受けた単身世帯の場合の所得制限は下記の通りです。
前年の所得額 | 所得制限 |
360万4000円未満 | 満額支給 |
360万4001円未満~462万1000円以上 | 50%の支給停止 |
462万1001円以上 | 全額支給停止 |
このように、20歳前に障害認定を受けた人が所得額に対して障害年金の所得制限が決められているのは、国民年金の支払いがなかった期間があるからです。
前年の所得額が462万1001円以上の場合には、障害年金の受け取りはできなくなりますので注意が必要です。
所得額は毎月の給料だけに限らず、副業で得たお金も含まれます。十分な所得があるのにも関わらず、それを隠して年金を受け取るのは犯罪行為です。
場合によっては返還を求められたり、所得額に関係なく支給停止というペナルティを課せられるだけでなく、重課税の対象となります。
「どうせ分からないだろう」「障害のある人にそんな厳しく調査しないだろう」などといった安易な考えは捨て、正直に申請することが大切です。それが後々のお金の悩みを防ぐことに繋がり、お金のある幸せな人生を送ることにも繋がるのです。
20歳前に障害認定を受けた2人以上世帯の場合は所得制限の対象金額が異なる
20歳前に障害認定を受けた2人以上世帯の場合、扶養人数によって所得額に対する所得制限に違いがあります。扶養人数が増えればその分所得制限を受ける所得額が高くなります。
【扶養人数1人】
前年の所得額 | 所得制限 |
3,984,000円未満 | 満額支給 |
3,984,001~5,001,000円 | 50%の支給停止 |
5,001,001円以上 | 全額支給停止 |
【扶養人数2人】
前年の所得額 | 所得制限 |
4,364,000円未満 | 満額支給 |
4,364,001~5,381,000円 | 50%の支給停止 |
5,381,001円以上 | 全額支給停止 |
【扶養人数3人】
前年の所得額 | 所得制限 |
4,744,000円未満 | 満額支給 |
4,744,001~5,761,000円 | 50%の支給停止 |
5,761,001円以上 | 全額支給停止 |
以上のように、扶養人数によって所得制限を受ける前年の所得額に大きな違いがあるので、障害年金を満額受給するためには、事前のシミュレーションが大切です。
場合によっては前年の所得額が少ない方が、手元に入るお金が増えるケースもありますので、しっかりと計算しておきましょう。
また、対象金額は非課税ですので、前年の所得額に応じて税金が差し引かれることなく受け取れます。老齢年金の場合、源泉徴収を差し引いて振り込まれますが、この場合はそのまま受給されるのでご安心ください。
そして、所得以外にこれだけの金額を受け取っていると会社に対して多少後ろめたい気持ちが出てくるかもしれません。しかし、もちろん社会保障である年金ですので、会社に知られたところで何の影響もありません。
なかには、勤務先に障害年金を受給していることが知られる心配をしている方もいらっしゃるでしょう。日本年金機構から会社へ受給の事実が知らさせることは一切ありませんのでご安心ください。
また、会社の年末調整で年金受給の申告をする必要もなく、わざわざ書類に記載する必要もありません。もちろん年金だけで他に収入がない場合には確定申告をする必要もありません。
障害者が国からもらえるお金はいくら?障害等級が重度であればあるほどもらえる金額は多くなる
障害年金の受給額は年金の種類や障害等級で大きく異なり、障害厚生年金の受給額は収入状況で変わります。
そのため、「障害年金は一律いくら」と単純ではなく、まずは障害基礎年金なのかそれとも障害厚生年金なのか、また障害等級などからシミュレーションしなければいけません。
シミュレーションをしておくことで、今後どのようにやりくりしていくのかがハッキリとわかりますし、子供の入学や進学時のために計画性を持って備えておくこともできます。
ここでは障害者が国からもらえるお金はいくらなのか?年金の種類でどう変わるのかなど、シミュレーションを例にして解説していきます。
障害年金は初診日に加入していた年金の種類によって異なる
障害年金の種類は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、それぞれ初診日に勧誘していた年金の種類によって支払われる受給額に違いがあります。
どちらの場合でも、障害基礎年金が土台であり、障害厚生年金に勧誘していれば、その分の受給額が上乗せされます。障害厚生年金は別途支払ってきているわけですから、障害基礎年金のみの人よりも受給額が高くなるのは当然のことです。
最近では年金を支払わずに放置している人も結構いらっしゃるようですが、場合によっては働けない状態でも受給してもらえないケースがあります。
どうしても支払えない場合には、一度市町村役場に出向いて相談してみてください。支払う意思を見せることで分割払いが可能ですし、理由によっては年金の支払いを免除してもらえる可能性があります。
役所にて免除された場合、もし怪我や病気で働くことができなくなった場合、他の人と同様に年金を受け取ることができます。
大切なのは相談することであり、そのまま放置していて良いことは何もありませんし、きっとその時になって後悔するはずです。
障害基礎年金も障害厚生年金も、病院での初診日の段階で加入していた人が対象で、障害基礎年金は、加入前(20歳未満)、または加入していない年齢(60~65歳)の時に障害の診断を受け、今もなお完治していない場合に該当します。
障害厚生年金は、初診日に加入していれば適用されます。また障害基礎年金は障害等級1~2級のみですが、障害厚生年金は1~3級までを受給の対象としています。
このように、障害年金は初診日に加入していた年金の種類によって異なり、障害厚生年金の加入者はよりたくさんの受給額となります。
決してこれは不公平な制度ではなく、厚生年金を支払っていたことによるきちんとした受給額です。現在では厚生年金に加入できる対象者の幅が大きく広がり、契約社員やアルバイト、パートなどの非正規雇用でも条件次第で加入が可能です。
障害基礎年金でもらえる金額はいくら?シミュレーションしてみた
障害基礎年金でもらえる金額は、障害等級によって異なり、障害が重い1級が最も高額です。ただし名目手取り賃金変動率や物価変動率などによって、障害基礎年金の受給額は毎年見直されていますのでご注意ください。
「年金の受給額が減っている」とよく言われますが、それは老齢年金のことで、障害年金はさほど変化はありません。
ここ10年の間に2014年に大きな変動を見せていますが、その後はほぼ水平推移を維持しており、決して下がっているわけではありませんのでご安心ください。
ただし、今後の状況により大きく見直される可能性は決して0ではないのも事実です。それでも年金を支払っている以上は突発的な事故や病気でも安心できる制度は確立していますので、そこまで深く考える必要はありません。
令和4年現在、昨年よりも0.4%引き下げされており、現段階の障害基礎年金でもらえる等級別の受給額は下記の通りです。
障害等級 | 受給額 |
障害基礎年金1級 | 972,250 円(月81,020円)+子の加算 |
障害基礎年金2級 | 777,800 円(月64,816円)+子の加算 |
障害基礎年金1級の受給額は、障害基礎年金2級の1.25倍となります。また先述した通り、障害基礎年金は2級までを対象としており、3級は障害厚生年金のみとなりますのでご注意ください。
もし高校卒業時の段階で18歳到達年度末の子供がいる場合には、1人につき最大223,800円(年間)までが支払われます。
子供の人数 | 受給額 |
1人目・2人目 | 1人223,800円(月18,650円) |
3人目以降 | 1人74,600円(月6,216円) |
障害厚生年金でもらえる金額は収入によって異なる
障害厚生年金でもらえる金額は、前年度の収入、加入期間、そして障害等級などにより大きな違いがあります。
前年度の平均月収額が大きければ大きいほど基本受給額は減りますが、加入期間が長ければその分受給額は高くなります。つまり十分な収入があっても加入期間によってはかなりの金額が受給されます。
各障害等級別と収入による受給額は下記の通りです。配偶者の加給年金は障害等級関係なく、一律224,500円となります。
障害等級 | 受給額 | 配偶者の加給年金 |
1級 | 平均月収額×0.55%×厚生年金加入期間×1.25 | 224,500円 |
2級 | 平均月収額×0.55%×厚生年金加入期間 | 224,500円 |
3級 | 平均月収額×0.55%×厚生年金加入期間 | 224,500円 |
1級に限り厚生年金加入期間に1.25が掛けられ、2級と3級は同じ金額となります。
障害基礎年金では3級の人は対象外でしたが、障害厚生年金でしたら2級の人と同等額が受給されます。もちろん年金の支払い金額は増えますが、もし3級の場合には障害厚生年金へ加入した方が生活困窮を防げます。
このように障害厚生年金でもらえる金額は収入によって異なり、収入面や加入期間で多少の違いこそありますが、基本的には平等な制度です。
実は年金制度でここまで充実した制度を確立している国は日本しかありません。海外でも年金制度はありますが、生活に必要な最低限のお金しか受給されないのが現状です。
障害を持っての生活は大変ですが、決して暗い将来ではありません。もしものためにも、是非とも障害厚生年金への加入をおすすめします。
障害者年金の申請条件
障害者年金は申請すれば誰でも受給できるわけではありません。障害者年金の申請には最低限の条件が定められており、全て満たしていて初めて申請可能です。
もちろん申請しても他の条件を満たしておらず、障害者年金の受給を断られてしまう場合もありますのでご注意ください。
そんな障害者年金の申請条件として、初診日の診断書提出、20歳以上の成人、所得制限など3つが挙げられます。これら申請条件についてもう少し詳しく解説していきます。
初診日の診断書が必要
障害者年金の申請には医師による診断書が必要不可欠で、必ず初診日に書かれた診断書を用意しなければいけません。
そもそも障害者年金は、国民・厚生年金への加入が絶対条件であり、初診日に加入していたことを証明しなければ、申請はできない決まりです。
これは障害者年金対象と診断された初診日に年金へ加入していなく、その後障害者年金を受け取るために新たに加入するのを防ぐためです。
初診日の日付を証明する診断書は非常に重要な証明書でもあります。また障害の等級を決めるためにも必要です。
診断書は紛失することのないようにしっかりと管理し、初診日の診断書の再発行はできませんので、誤って捨ててしまわないよう十分にご注意ください。
しかしながら年金に加入していたとしても、支払いを滞納していたり、加入期間の2/3以上支払っていなければ、診断書があっても障害者年金を受け取ることはできません。
もし、現段階で障害を負っていなく年金の支払いができない場合には、一度役所へ相談し、分割払いや免除などを適用してもらいましょう。
20歳以上の成人
2022年より18歳から成人とみなされるようになりましたが、年金への加入は20歳からです。つまり、ここは注意しないといけないのですが、障害者年金の申請ができるのも20歳以上の成人のみとなります。
もちろん20歳以上の成人でも年金を支払っていなければ障害者年金の受給権利はありませんのでご注意ください。
20歳未満の場合には、障害児福祉手当が受給されますが、20歳の誕生日を迎えると同時に、受給は停止します。しかし20歳になった時点で未成年期間の障害者年金の受給が可能になります。
このように法的には成人の18歳19歳ですが、障害者年金は20歳以上の成人のみに適用されます。
所得制限をクリアしている
障害厚生年金とは異なり、障害基礎年金の場合、前年度の所得額によって全額支給停止となるケースがあります。
所得制限は、3,604,000円未満でしたら満額支給されますが、3,604,001~4,621,000円で50%カット、4,621,001円以上になると全額支給は停止されます。
ただし扶養者がいる場合、扶養人数によって所得制限が変わり、例えば3人ですと5,761,001円以上から全額支給停止となります。
この所得とは全ての収入が適用されるため、例えば本業のほかに副業としてインターネットビジネスで稼いでいた場合、これも所得として申請しなければいけません。
「副業の収入は黙っていればバレないだろう」と、無申告で放置していると、重課税が加算されたり、場合によっては障害者年金の受給が停止されたりすることも十分に考えられます。
所得を隠していて良いことは一切ありませんので、必ず副業を含めた全ての収入を申告してください。
障害年金の申請から受給までの流れ
障害年金の申請から受給までの流れは決して難しくはありませんが、様々な書類の提出が必要です。そのため、1人では正しく申請できなかったり、書類に不備があって障害者年金受け取りまで時間がかかってしまう場合があります。
もし1人で不安でしたら、社労士(社会保険労務士)へ相談してみてください。直接社労士事務所へ出向いて相談に乗ってもらう方法もありますが、各市町村役場でも社労士を紹介してもらえます。
社労士の料金は多少の違いこそありますが、基本的には10万円程度で動いてもらえます。今すぐ10万円を支払えない時には、障害者年金が受給されたあとの支払いも可能な場合もありますので、一度相談してみることをおすすめします。
それでは具体的に、障害年金の申請から受給までの流れを解説します。
- 年金請求書
- 障害者手帳のコピー(所持の場合)
- 診断書
- 年金手帳
- 戸籍が証明できる書類(戸籍謄本・住民票など)
- 本人名義の通帳
- 印鑑
上記1つでも不備があったり用意できなかった場合には、障害年金の申請ができなくなりますのでご注意ください。
現在の仕事でどんな支障・問題が出ているのか、そして医師から障害と診断されるまでどんな経緯があったのかなどを詳しく書いてください。
全ての申請に必要な書類、及び病歴・就労状況申立書など、全ての必要書類を国民年金機構の窓口へ提出してください。
必要書類の提出が受理されると審査が開始されます。審査は早くても2ヶ月ほどかかりますので、通知が届くまで待ちましょう。
審査で問題ないと判断されれば、年金証書が発行(裁定日)されます。実際に障害年金の受給が開始されるまではさらに1ヶ月ほどかかる場合があります。
基本的には裁定日が1~15日だった場合には翌月の15日、16~31日の場合は翌々月の15日となります。
障害者年金に関するQ&A
最後に障害者年金に関するよくある質問と回答をまとめてみました。障害者年金という障害者が国からもらえるお金について基本的な知識を頭に入れておきましょう。
まとめ
ここまでで、障害者が国からもらえるお金はいくらなのか?また、障害者が国からもらえるお金「障害年金」について詳しく解説してきました。
病気や怪我などで障害を負ってお金に困った場合でも、障害年金へ受給申請することで国からお金がもらえます。
ただし、障害年金の受給額は年金の種類や障害等級、障害基礎年金か障害厚生年金などで大きく異なります。まずは障害年金の申請に必要な書類を準備し、お近くの市町村役場(年金事務所)へ問い合わせしてみてください。